2011年2月26日土曜日

≪書評≫キュレーションの時代 佐々木俊尚

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かなりお勧めの一冊、
2011年新聞・テレビ消滅」の著者、
佐々木俊尚さんの新刊です。


まず、この本のタイトルにもなっている、
キュレーションとは、
「無数の情報の海の中から、
自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、
そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること」です。

ただ、この本題(キュレーションの話)に入るのは、
本書の半分以上が過ぎた第四章からです。
もちろんそこにつながる話がずっとあるわけですが、
なんだか回り道をしているような感覚もあり、
でもその「回り道」がこれまで体験したことがないほど心地よく、
常に楽しみながら、そして期待値を高めながら、
目的地(キュレーションの話)まで読み進めました。

紹介したい内容が多すぎて困るのですが、
あえて絞って書くと、
本書の中に出てくる「視座にチェックインする」
という考え方にとても共感しました。

キーワードやジャンルや場所のような無機物を視点にする限り、斬新な新しい情報はなかなか入ってこない。でも他者の視座にチェックインして、その人たちの視点で世界を見ていくと、鮮やかな新情報が次々と流れ込んでくる。

チェックインというのは、
foursquareの用語から来ているのですが、
そこから情報を収集するという行為と
それを友人に伝える(シェア)という行為の
意味が含まれいます。

他者の視座にチェックインするというのは、
信頼できる人のTwitterをフォローしたり、
信頼できる人のブログを読んだり、
とった行為のことですが、
マスメディアが衰退し、ソーシャル化が進む中、
「他者の視座にチェックイン」する傾向が強まり、
そうすることで情報がタコツボ化することなく、
情報のセレンディピティを生み出すということです。

たぶん、この本のあとがきを読めば、
広告人として読まずにはいられません。

マスメディアを経由して情報をコントロールする旧来の「広告」は消滅します。マスメディアの記者に情報を提供する「広報」も、ビオトープが無数に立ち上がってくる中で意味をなくしていきます。広告も広報も販売促進もやがては一体化し、「どのようにして的確なビオトープに情報を投げ込むのか」「どのようにして情報を発信するのか」といったことをポートフォリオを組んで分散させ、的確にコンサルティングできるような広告企業だけが生き残っていくことになるのではないかと、私は考えています。
(中略)
大切なのは、将来出現してくるソーシャルメディアを軸とした情報の流路がどのような全体像になっていくのかというビジョン。そのビジョンをきちんと認識し、そのフレームワークに向けて中長期的な戦略を持って行くことでしょう。いまのメディア・広告業界のとりくみは、戦略と言えるほどのレベルにはとうてい達しておらず、広告「戦術」をとっちらかってやっているだけのように思えます。

マスメディアを経由した広告が
完全に「消滅」するとは思いませんが、
限りなく衰退するのは目に見えています。
そして我々が「戦術をとっちらかってやっている」のも
正直、感じるところです。

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