2012年7月8日日曜日

広告人が実践すべき「Think Small」の法則(『Think Simple』を読んで)

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Think Simple―アップルを生みだす熱狂的哲学
ケン・シーガル
NHK出版
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スティーブ・ジョブズのもとでアップルの
クリエイティブディレクターを務めていた
ケン・シーガルが書いたこの本には、
多くの広告人にとって、
教訓となるような話が多く含まれています。

その中でも個人的に特に印象に残っている
箇所を紹介します。
それは、「Think Small」という章の中の
「少人数の法則」という話です。

今私がいる九州支社に異動してからは
そんなことはなくなりましたが、
私が本社にいたときには、
参加者が10人を超すような会議が
しばしばありました。

時にはそれが本当に必要なこともありましたが、
「あぁ、今日は何もまとまりそうにないなぁ・・・」
と思うことも少なくなかった気がします。

筆者はこのことについて、
次のように述べています。

広告の世界における長年の経験から、
私は次の科学的法則をまとめることに成功した。
プロジェクトの成果の質は、
そこにかかわる人間の多さに反比例する。

ちなみに、
単に人数が少なければいいのではなく、
「有能な少人数のグループ」であることが
重要であると繰り返し強調されてあります。

また、上記の法則と併せて、
もう一つ重要な原則が紹介されています。

プロジェクトの成果の質は、
最終的な意思決定者がかかわる程度に比例する。

つまり、「最終的な意思決定者」が
プロジェクトの過程にしっかりと
関与することが大切だということです。

通常日本では、広告の仕事において、
最終的な意思決定者が
プロジェクトの過程に関与することは
非常に稀なことです。

広告主の担当者と打ち合わせを重ね、
それに対して、
広告主の社長だったり広告部長だったりが
最終的な判断を行うというのが
通常の流れだと言えるでしょう。

しかし、アップルでは、
CEOのジョブズ自身が、
マーケティングのプロジェクトに
大いに関与しています。

先週ブログに書いた
「愛されるアイデアの作り方」でも、
最終的な意思決定者である鹿毛さん自身が
プロジェクトの初期段階から
大きく関与していることがわかります。

そう考えると、
この原則が正しいということも
十分に頷けます。

広告主側の「最終的な意思決定者」が
プロジェクトにかかわる程度が低いことは
よくあることですが、下手をすると、
広告会社側の「最終的な意思決定者」の
かかわる程度が低いこともたまにあります。

プレゼンの前日になって
広告会社の「最終的な意思決定者」が
急に現れて、企画書を見るや、
これまでの打ち合わせをふいにするような
「アドバイス」を行い、
企画内容が変わってしまうような
経験をしたことが何度かあります。

恐らく、同じような経験をされた
ことがある方も少なくないと思います。

言うまでもなく、そのような競合プレでは、
勝利したことが一度もありません。

「最終的な意思決定者」は、
最初からプロジェクトにしっかり関与するべきだし、
逆に言うと、
しっかりプロジェクトに関与できていない人間は
「最終的な意思決定者」であるべきではない
とも言えます。


最後に、この本からもう一つだけ、
広告人が教訓として心に刻むべき箇所を
紹介させて下さい。
それは、「Think Human」という章に書かれています。

アップルは初代のiPodを説明するのに、
5ギガバイトのドライブを搭載した、
重さ185グラムの音楽プレーヤーとは言わなかった。
シンプルに「1000曲をポケットに」と言っただけだ。
これが人間のコミュニケーションのとり方だ。
(中略)
人と結びつく最良の方法は、
物事を説明するときに、
人が日常会話で使う言葉で話すことなのだ。

これは、多くの広告人が、
ハッとする話ではないでしょうか。


Simplicity is the ultimate sophistication.

レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉であり、
1977年にアップルが「AppleⅡ」のパンフレットに
キャッチコピーとして使った言葉です。

アップルのマーケティングの強さの秘密は、
まさにここにあるのだと実感しました。

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