2011年8月25日木曜日

マスメディアが見習うべきなのは印象派だと思う

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先日、ソーシャルメディア進化論という本を読んだ感想を
ブログに書いたのですが、
実は、この本を読んで一番印象に残っている箇所は、
以下の部分です。

メディア論の父、
マーシャル・マクルーハンは
こんな予言を残している。
「新しいメディアがその特性に気づいたとき、
旧来のメディアもまた自らの特性に気づいていく」
絵画が記録としての役割を写真に奪われ、
初めてキュビズムやシュールレアリスム
といった作家の内的世界の表現が確立されたように、
いま、私たちは、新旧それぞれのメディアが
いっせいに変化しようとしている
まさにその瞬間に居合わせている。

写真が発明されたのは、1827年。
キュビズムやシュールレアリスムが
台頭したのは、20世紀初頭。
そこにはおよそ100年もの開きがあります。

おそらく、写真の影響を最初に受けたのは、
キュビズムやシュールレアリスムではなく、
モネやルノワールの印象派だったと思います。

写真や印象派が出てくる前のヨーロッパでは、
画家にとって、肖像画を描くことが、
一つのステイタスでした。

しかし、写真の発明により、
肖像画への需要は低下し、
ヨーロッパの画家たちは、
肖像画などの写実主義から離れ、
絵画独特の表現技法を模索し始めました。

そのような背景の中、
これまでの絵画とは全く異なる
「鮮やかな色彩で、大胆に筆致を残す」
印象主義というものが生まれたのです。
※それまでは、筆致を残さない絵が美しいとされていたので、
当然、最初はかなり非難を浴びています。

こうして絵画は、
それまでの写実主義から解き放たれ、
より個性やメッセージ性の強いものとなりました。
キュビズムやシュールレアリスムが生まれたのは、
こうした歴史があった結果です。

先日、ちょうど、国立新美術館で、
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」
を見てきたばかりなので、
ついつい、前置きが長くなってしまいました。。



冒頭のマクルーハンの言葉、
「新しいメディアがその特性に気づいたとき、
旧来のメディアもまた自らの特性に気づいていく」
に戻ります。

この本の中では、
「新しいメディア」とは当然、
ソーシャルメディアのことですし、
「旧来のメディア」とは、
マスメディアのことを指しています。

それにしても、
今述べてきたような、
「写真と絵画」の関係は、
「ソーシャルメディアとマスメディア」
の関係に重なる部分が多くあるように思います。


フランスの画家で大御所でもあった、
ドミニク・アングルという人物は、
「旧来のメディア」である絵画を守るため、
当時、フランス政府に、
「新しいメディア」である写真を
禁止するように要求したそうです。
ところが、その一方で、自分の制作には、
写真を用いていたといいます。

おかしな話ですが、
「ソーシャルメディアとマスメディア」の関係でも、
似たような話がありそうな気がします。。

一方で、
「旧来のメディア」である絵画が
生まれ変わった結果登場した「印象派」は、
「新しいメディア」である写真を真っ向から否定するのではなく、
その良い部分を取り入れようとしていたと思います。

「刻々と変化する自然の光の一瞬をとらえる」
という印象派でみられる表現技法の特長には、
写真の影響が大きくあったと考えられます。

マスメディア(旧来のメディア)も同様に、
ソーシャルメディア(新しいメディア)から学び、
参考にすべき部分は少なくないのではないでしょうか。



絵画が写真という新しいメディアの特性に気づき、
「印象派」として自らの新しい特性に気づいたように、
マスメディアもソーシャルメディアという
新しいメディアの特性に気づき、
自らの「新しい特性」に気づくときだと言えます。

その「新しい特性」とは何なのか?
それを考えるのは、マスメディアの役割でもあり、
我々広告会社の課題でもあると思います。

本当は、「その新しい特性って何なの?」
っていう部分まで考察したかったのですが、
壮大なテーマになってしまい、
簡単にまとまりそうになかったので、
今後の研究課題とさせていただきます。笑

今、ひとつ言えるのは、
絵画が写真の登場でも滅びなかったように、
マスメディアがソーシャルメディアの登場により滅びる
というようなことはない、ということです。

ただ、絵画に「印象派」という革命が訪れたように、
マスメディアにも早くその「新しい特性」に気づき
新たな局面を迎えることを期待したいと思います。


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