2012年1月3日火曜日

差別化にまつわる落とし穴(『ビジネスで一番、大切なこと』を読んで)

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ビジネスで一番、大切なこと 消費者のこころを学ぶ授業
ヤンミ・ムン
ダイヤモンド社
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この本のテーマを一言で表すと、
「差別化」になると思います。

差別化に焦点を当てた本と言えば、
「独自性の発見」など他にも多くありますが、
この本にもなかなか興味深いことが書かれています。

突然ですが、もしあなたが、
以下のような「通知表」を受け取ったら
どう感じるでしょうか。

プレゼンスキル     :★★★★
具体的な証拠の活用  :★★★★
独創性          :★★
論理性          :★★★★★
分析的思考       :★★★★
(★3つが平均値)

恐らく多くの人が、
「もっと独創性を高めなければ」
と感じるのではないでしょうか。

以下、本文からの引用です。

相違点を可視化するや、
おかなしな現象が起こる。
当事者たちは、
互いの違いを際立たせるのではなく、
解消しようとするのだ。
(中略)
どんなに傑出した項目があったとしても、
全体としてでこぼこがあれば、
へこんでいる方を埋めたくなる衝動に駆られる。
企業も同じ罠に陥る。

企業であれば当然、
自社の強みや弱みを分析し、同時に、
競合他社のことも詳しく調査しているでしょう。
しかし、実はそこに、
現代の大きな落とし穴があるようです。
競合他社と競おうとすればするほど、
その企業は「同一化」へと進むことになるのです。

他社と比べて自社に足りない部分を補おうとする余り、
自社の独自性は影をひそめ、
いつの間にか他社と似通った存在になってしまいます。
わりと心当たりのある話ではないでしょうか。

差別化を実現するためには、
競争ではなく、
競争からの完全な脱却が必要なのだ。

作者のヤンミ・ムン教授はそう言います。

また、競合調査と同様に、
市場調査や顧客調査の類も、
企業にとっては必須のマーケティングツールですが、
それらに過度に依存してしまうと、
顧客のニーズに答えることのみが至上命題化してしまい、
それもまた、「差別化」ではなく、
「同一化」を生む原因となってしまうのです。

皆が同じようにニーズに答えようとすれば
行きつく先は結局同じでしかなく、
早いか遅いか、高いか安いかの
違いしかなくなってしまいます。

競争相手を無視せよと言っているのではない。
消費者と同じ目で見ることが重要なのだ。
消費者の目にはぼんやりと
カテゴリー全体が見えるだけで、
個々のブランドは映っていない。
この不鮮明さから抜け出すこと。
それが、「違っている」ということなのだ。

では、この成熟化してしまった現代の市場において、
どのように差別化を行うことができるのか。

本書では、
「リバース・ブランド」
「ブレークアウェー・ブランド」
「ホスタイル・ブランド」
という3つの類型で、
差別化に成功した企業の事例が紹介されています。
(詳しくは、本書をご参照ください)


ここからは、私の個人的な考えですが、
私は、「差別化には限界がある」と思っています。

企業やそのマーケティングをサポートする
広告会社であれば、当然、
「どう差別化できるか」ということを
ただひたすら考えなければいけないのですが、
成熟市場で差別化を図るためには、
「イノベーティブなアイデア」が不可欠であり、
それを本当の意味で達成した企業は、
過去を振り返っても数えるほどしかありません。

「イノベーティブなアイデア」は
誰にでも思いつくものではありませんし、
無理に「差別化」に固執することは、
「消費者にとって意味のない差別化」
追及してしまう危険性をはらんでいます。

本当の差別化を生み出すことができる
イノベーティブな発想力が求められていることは
言うまでもありませんが、
まずは、「消費者にとって意味のある差別化」と
「意味のない差別化」の違いを見極めることが
できる力を身に付けていきたいと思います。

そして、「差別化の限界」に直面したとき、
広告やコミュニケーションとして何ができるのか。
それもまた大きな課題のひとつだと思います。

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