2012年1月15日日曜日

「戦略」の前に、まず「戦術」を決めよ(『ボトムアップ・マーケティング戦略』を読んで)

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実戦ボトムアップ・マーケティング戦略
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久しぶりに目から鱗が落ちる感覚を味わいました。

「まず戦略を固めて、それから戦術を考える」
それは、これまで自分の中では、
疑う余地もない常識だと思っていました。

しかし、この本が提唱する
「ボトムアップ・マーケティング」は、
完全にその逆の概念で、
「戦術によって戦略が決定し、その後に戦略が戦術を動かす」
という考え方です。

戦略がないのに戦術なんて考えられない。
考えたとしても、そんなのうまく機能しない。
恥ずかしながら、この本を読むまで
そんな風に考えていました。
しかし、この本を読み進めるにつれ、
自分の考えは完全に間違っていたと
思うようになりました。


このボトムアップ・マーケティングを理解するためには
まず、「戦術とは何か」「戦略とは何か」
理解する必要があります。

まず、戦術は、以下のように定義されています。

戦術とは、顧客の心の中で競合に対して
優位性と知覚される斬新な切り口である。

「顧客の心の中で」というのが
非常に重要なポイントです。
さらに、戦略については、以下のように書かれています。

戦略の目的は、戦術を活かすために
経営資源を集結することである。

つまり、それが、
「戦術によって戦略が決定し、その後に戦略が戦術を動かす」
ということなのです。

なぜ戦略を先に決めると
まずいことになるのかについては、
是非この本を読んでみていただきたいです。
事例とともに解説されていて
非常に説得力があります。


さて、ここで考えてみたいのは、
「広告会社がコンペに参加するときも
戦略よりも先に戦術を決めるべきか」
ということです。

一般的に大雑把に言うと、
戦略を考えるのは、
「マーケティング」の役割であり、
戦術を考えるのは、
「クリエイティブ」や「プロモーション」や「メディア」
の役割だと言えます。

そもそも戦略と戦術を考える部隊が
別々に切り離されて存在することが問題、
という議論はここでは置いておくとして、
ここでも、やはり、
まずはマーケが戦略を考えるのが第一歩だと
これまでは決め込んでいました。

しかし、この本を読んだ今は、
多少の例外はあるとしても、
まずは戦術を考えるべきだと感じます。

ただし、
「戦術とは、顧客の心の中で競合に対して
優位性と知覚される斬新な切り口である。」
という戦術の定義を理解していることが前提です。

部署とか関係なく、
顧客の心の中をよく理解している人間が
有効な「戦術」を見出す。
そしてそれによって戦略が決定し、
全てがその「戦術」を後押しする。
そんな進め方がいいのかもしれません。

戦略を先に決めてしまうと、戦術は、
「戦略を具現化すること」が目的化されてしまい、
「顧客の心の中で競合に対して優位性と
知覚される斬新な切り口」を探すという
本来の役割が疎かになってしまう
危険性があります。

また、この本の中には、
ドイツの陸軍元帥エルヴィン・ロンメルの
言葉として以下のように書かれています。

戦術的に実行できないような戦略計画は
それが戦略上最高であっても
使い物にならない

確かに、コンペの敗退理由として
「コンセプトは素晴らしいけど、
具体施策がいまいち・・・」
みたいなことってよくあるような気がします。

この本に書かれている
非常に重要なポイントとして、
以下の2つのことも忘れてはいけません。

ひとつは、
戦術と戦略のどちらかが重要ということではなく、
重要なのは、「両者の結びつき」
だということです。

もうひとつは、
「現場に出向く」ことの重要性です。
現場に出向かなければ、
有効な「戦術」を見出すことはできません。
ちなみに、現場とは、
「見込み客の心」だと書かれいます。


正直、この本のドックイヤーは、
前半部分に集中していますが、
読んでみる価値のある一冊だと思います。

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